交通事故
Traffic Accident
交通事故は、最も身近なトラブルです。
事故直後に物損が中心となる段階、通院をして治癒または症状固定に至るまでの段階、通院治療が終わり示談の段階に分かれます。どの時点で弁護士に依頼した方がいいかは事案によりますが、早過ぎても方針は立てづらく、他方、最後の段階に至るまで何も相談もしないというのも心もとないものです。
その時々、状況に応じて相談をしつつ、依頼は適切な段階で個別の事故ごとに方針を定めて行うことが大切です。
当事務所の特色
~依頼者の方の自己負担なく成果を上げることを目指します
弁護士費用特約にご加入の方は、その特約の保険金支払基準(LACと呼ばれる基準があります。)で委任契約を行うこととし、自己負担の生じることがないように致しております。弁護士費用特約にご加入でない方は、初回のご相談につきましは電話等で行って無料としつつ、状況に即して継続相談をお受けし、依頼になるかどうか、その場合の費用と見込まれる利益を説明した上でご希望に基づいてお受けすることとしています。
お電話での初回相談は無料です
当事務所では、お電話での初回相談は無料といたしております。その際、簡単な事案の聞き取りと、事故の一般的な対応方法、その他、ご相談の状況に応じての助言を致しております。
事故にあってどうしたら良いか分からない時には、一度ご利用ください。
弁護士費用特約や継続相談の活用
弁護士費用特約は近年普及が進んでおり、その利用による不利益は生じません。知らず知らずのうちに付帯されていることも多いものの、交通事故が具体的なトラブルに発展するまで利用されることが少なく、利用率の低い保険であるとも言われています。
当事務所ではこの特約を活用し、その保険金支払基準の範囲でご相談やご依頼をお受けし、依頼者の方の自己負担なく利用していただけるように致しております。また、事案によっては適宜の継続相談のご利用をして、サポートをすることも致しております。
事故にあったとき
事故の被害にあったとき、まずは警察に連絡して、それからしばらくして相手の任意保険会社から連絡があります。それからの期間は、交通事故の被害者としてしっかりした補償を受けるために備えておくことが大切です。
事故からしばらく経って、保険会社から示談の申し入れがあるかもしれませんが、示談書の取り交わしに先立って専門家に一度相談をなさってみてください。できればその前、事故後の通院中に相談されることが望ましいといえます。そうすれば、それぞれの被害者の方の事案に即して、何が問題となるかを見据えて対応することができるからです。
(いつ相談すべきでしょうか)
相談の時点では、まだ弁護士に依頼するかどうかを考える必要はありません。保険会社と対立していないのであれば、保険会社のことを過度に疑う必要もありません。ただ、適切な時点で証拠を取り付けておくことや、通院中の治療の経過などが後々問題となることもありますから、事故直後や治療中にも、一度ご相談になっておくと良いでしょう。
基礎知識
物損の対応、通院中~症状固定まで
(物損のこと)
事故直後は、物損といって、自動車の修理代や買い替えの費用の補償がまず問題となることが一般的です。示談は2回、物損と人損(怪我)を分けて行うことが通常です。物損の解決が長引く場合には、代車などで損害が拡大しないようにしておくことも大切です。
(通院から治癒、症状固定まで)
事故後の通院期間の目安として、身体に大きな衝撃が加わるようなむち打ちは、他覚所見がなくとも症状の程度に応じて3~6か月の通院は一般的です。事故が大きい場合や、症状が長引く場合にはもっと長くの療養が必要となるかもしれません。
どの段階まで通院を認めるかは、本来は、患者である被害者の方を診察した主治医の判断なのですが、実際には保険会社がいつまで通院を認めるか、病院に尋ねるなどしたことを契機に治療終了となることもあります。完全に治ることを「完治」といい、症状は残っているものの、それ以上通院してもよくならない状況を「症状固定」といいます。症状固定後も自費で通院することはできますが、治療費は保険会社から支払われなくなり、通院をしたことに伴う慰謝料なども発生せず、後遺障害に対する補償の問題として扱われます。
医師の指示に従い、まずは完治を目指して適切な治療やリハビリを受けるようにしてください。
弁護士費用特約
弁護士費用特約は、被害者側の自動車保険に付帯されていることのある特約です。弁護士に相談や依頼した場合の費用、実費を含めて補償され、利用したことによる不利益はありません。
一括対応のこと
一括対応というのは、任意保険会社が被害者の通院先への支払いをし、自賠責を含めて一括の窓口として対応することです。その後、任意保険会社は自賠責に求償を行います。
被害者としての権利
検察庁から実況見分調書や裁判記録、相手保険会社から診断書や診療報酬明細書、医療機関からカルテの開示を受けられます。物損の資料も修理工場や相手保険から取り寄せが可能です。
解決事例
所有権留保車両と評価損の帰属
所有権留保車両の評価損が被害者に認められた事例
〈事案〉
被害者が高級車を分割払いで購入した直後、車検証の所有者がまだ自動車の販売会社になっているときに追突事故に遭い評価損(格落ち)が生じました。
評価損の請求権がその車の所有者(販売会社・売主)と使用者(被害者・買主)のどちらに帰属するかが問題になりました。
〈対応〉
評価損の帰属を名義上の所有者(販売会社)とする裁判例が存在し、任意での話し合いは別として、訴訟でこれを加害者に請求するという場合には、あらかじめ販売会社と評価損の請求権の帰属、弁済金の受領について合意をするなどの手当てをしたうえで臨むことが適切です。そのような対応を前提に、裁判所が示した和解額を加害者から回収しました。
〈コメント〉
売買の支払方法を分割とし、完済まで所有権を売主に留める所有権留保の法的性質は、形式を重視する見解(所有権的構成)と実質を重視する見解(担保的構成)があり、所有権的構成によれば評価損の請求権は形式上の所有者つまり販売会社に帰属し、担保的構成によれば評価損の請求権は実質的な所有者つまり被害者に帰属するとなりそうです。
裁判例は「評価損は、車両の交換価値の低下であり、車両の所有者に生じるものであるところ、…被害車両の所有者ではないし、その後代金が完済されたと認めるに足りる証拠もないから、…(買主)が評価損を請求することはできない。」とする例があります。
ただ、実際には事故の前後を通じて返済に滞りがなければ、販売会社が評価損の請求に関心を持つことはありません。もっとも、評価損の帰属を名義上の所有者(販売会社)とする裁判例が一定程度ある以上、任意での話し合いは別として、訴訟でこれを加害者に請求するという場合には、あらかじめ販売会社と評価損の請求権の帰属、弁済金の受領について合意をするなどの手当てをしたうえで臨むことが適切でしょう。
過失相殺事案における人身傷害保険の補填機能
自賠責を回収後、裁判基準で人身傷害保険金を増額した事例
〈事案〉
事故で被害者には200の損害を生じましたが、被害者側にも25%の過失があり、過失相殺後の損害は150でした。被害者請求で自賠責から50の支払いを受けてから、自分の保険会社に人身傷害保険金を請求しました。
人身傷害保険では、本来150の支払いがなされるはずですが、保険会社は自賠責回収金の50を控除し、100の支払いを主張しました。
〈対応〉
訴訟を提起して対応し、裁判所の認定した損害は200でした。そして、人身傷害保険は被害者の過失に関わらず損害を補てんするための保険であることから、自賠責の回収金50は過失によって加害者から受けられない部分に補填され、残りの150の支払いを受ける趣旨の和解が成立しました。
〈コメント〉
人身傷害保険で算定される金額は、裁判基準の算定額よりも低くなりますが、訴訟による場合には裁判上の認定額を損害とする解釈がなされています。これは過失相殺が問題となるケースで、人身傷害保険金を、過失相殺によって加害者から受けられない部分に充当するための技術です。
人身傷害保険を先行して回収した場合には上記を肯定する最高裁判決がありますが、今の約款は多くは賠償金(自賠責含む)の受領が先行した場合でも同様の読み替え規定が置かれています。
事故から数年経ち、証拠散逸後の事故態様の争点化
事故から10年後に保険会社がした6:4の過失相殺の主張を排斥し、10:0の解決をした事例
〈事案〉
被害者は事故で怪我を負い10年にわたり病院に通いました。その後、症状固定となって示談の話になりましたが、保険会社は突如として被害者側の過失を指摘し、40%を減額すべきと主張してきました。
〈対応〉
保険会社の示談案は拒否し、訴訟手続で過失相殺を全面的に争いました。事故直後に被害者は救急車で運ばれており、警察の実況見分が相手の単独立会いで行われていることなどを主張しました。
事故現場は県外の遠方の地でしたが、幸いなことに当時のままでしたので、もう一度現地に赴いて実況見分をして当時の状況を再現しました。第一審では9:1の認定となり、控訴審では被害者に過失は全くないとされ、最終的に10:0で、10年分の遅延損害金を付しての和解となりました。
〈コメント〉
保険会社が10年も過失を問題とせずに治療費の立替えをしながら、補償段階になって突如として過失相殺をするというのは不適切です。ただ、被害者の方は、こういったことも起こりうることに十分に備えた準備・対応をすることが必要で、それは証拠の確保にほかなりません。事故から5年で救急搬送記録や、カルテなどは滅失します。この事例では、交通事故証明書すら取り付けができないケースで、適宜保険会社から開示を受けるなどしていますが、本当はこういったものも被害者の方自身が事故直後に確保しておくことが望ましいものです。
なお、10年も経ってから症状固定となり、補償問題が生じるケースは極めてまれですが、この場合遅延損害金が多額になります。遅延損害金の割合は年5%ですが10年も経つと50%、つまり、金額が1.5倍に加算されるべきなのですが、こういった加算は裁判手続でなければ保険会社も支払いに応じません。
ユニークなことに、弁護士を付けて訴訟をした場合に認容損害の元本の1割の増額が弁護士費用相当の損害として認められますが、この弁護士費用相当額にも10年前の事故当時に遡って遅延損害金がつきます。解決までは本当に長い時間がかかりましたが、高裁の和解案はこれらを十分に斟酌したものでした。